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Author:キスイヤマスター
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牛込医院。。。



いつもなら難なく降りることのできる階段がその日はとてもじゃないが苦痛でならなかった。
悟られないように辺りを見渡すようにしてゆっくりと下る理由をつけてはみたものの
20年ほどだろうか、この病を背負い生きてきた。
あきらかに今回のそれは今までのものとは比べ物にならない。苦痛で顔が歪む。
ついにこの時が来たかと・・・それでもやはり生きたいと言う本能か・・・
俺は診察を決意した。
薄暗い院内とは裏腹に、待合の患者たちはそれぞれが顔見知りであるかのように
語り合い、余計な御世話をやきあい、自分より不幸な病の人間探しに明け暮れている。
座っていることも苦痛な俺は読む気など毛頭ない週刊誌を手に取り
適当にそれに書かれた活字に目をやり周囲との遮断を試みる。
驚くほどピンクのナース服が不釣り合いな中年女性が
笑顔でまだ誰だかもわからない俺の名前を呼んだ。
適当に読んでいた週刊誌を適当に元の位置に戻して言われるがままに横たわった。

よく見ると浅黒く色調としてはピンクとの相性は良いのだが
終始笑顔で何より声の大きい所が俺にとって迷惑な看護師が答える気力もない俺に
あれこれと質問しては、カルテに書き込む。
しばらくすると老人の医師が俺の横に立ちはだかり無言のまま俺を観察し
ピンクの看護師に何やら指示を出している。
俺が本気で、おそらく自分の意志で答えたことと言えば苦痛に耐えがたい痛みだという事。
日常であろう老人医師と看護師は馴れた感じで準備を整えた。
20年もの間耐えてきた俺にとってはそこは冷たい病室。
まるでどこかのアドベンチャーホラーの一室であるかのような気分に見舞われる。
全体の薄暗さを一瞬にして複数のライトが照り、見上げると老人医師の
眼鏡の奥の大きな目が浮き彫りになり余計にホラーの要素が増す。
なんだか俺はここで終わるような感覚に陥ることで、全てをあきらめて
この建物の外でなら俺がこの老人に例えば席を譲ったり例えば信号で手を貸したり
例えばATMで使い方を教えたり・・・ときっとそうに違いないなどという空想を抱きながら
それでも今はこの老人に全てを任せることしか出来ない自分を薄れていく意識の中で
しっかりと苦笑しながら俺は麻酔を打たれている。

どれくらいしてからだろうか
金属のカチャカチャという音だけを聞いてはそれがまさしく俺に何かを施している事を
唯一確認できる状況で時間が過ぎて行った・・・


その時
眼鏡の老人が声を発した。。。


「いやあ、これは相当膿が出たよ。痛かったでしょ。」


ああ、痛かったとも。。。

今日やっと俺は。。。

長年我慢してきた 痔の手術を受けた。。。


いやぁ、辛かったぁ。。。

たとえどんなに辛くとも

キスイヤは一年中皆様をお待ちしております。。。
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