カランコロンカランコロン・・・
今時珍しい鈴のついたいかにも安っぽい扉が開く。。
「いらっしゃいませっ」
ウエイトレスのあみはいつものように満面の笑顔で客を迎え入れる。
「・・・・・・・・」
あみの笑顔を気づく様子もなく、いや故意に避けるようにカウンターへと座る女。
「お客様、あちらの窓際席も空いてますが・・・」
「ここに座りたいんだけどいいかしら?」
あみの言葉にそう答えた女はあみに先ほどとは打って変わって満面の笑みを返す。
「あっ、もちろん結構です。」
その端正な顔立ちに同性ながら言葉を失うあみ。
細く通った鼻筋、頬から顎にかけてのシャープなラインに
なぜだかそれ以上の言葉をかけられないあみ。女の眼は笑ってはいるが
あみを遠ざけよるようにも見える。
その美しさに威圧を感じ、動けないままでいるあみ。
「マスターいるかしら?」
「・・・・・」
「聞こえる?マスターはいるの?」
「はい、すいません。もう帰るころだと思います。」
「そう・・・」
そう言って俯いた女の横顔を、注文を取ることすら忘れ、まだ視線を外せないでいるあみ。
女が煙草に火をつけたことにかろうじて灰皿を出す・・・
カランコロンカランコロン
「お帰りなさい、マスター。」
マスターの帰りに安堵をおぼえようやくと我に帰るあみ。
カウンターに視線をやりお客さんがあることを伝える。
「ああ・・・」
とだけ言って、その女に目もくれずそのままカウンターの中へ入るマスター。
女も俯いたまま灰皿に消された長めのタバコをただ見つめている。
何も言わずカウンターの女へとカフェオレを差し出すマスター。
その光景を不思議そうに、メニューを胸元で両手で抱え見ているだけのあみ・・・
「ありがとう。覚えているのね。」
そういうと正面のマスターへさっきあみに投げかけたのと同類の微笑みを向ける女。
それには答えようとしないマスター。
「あみ。買い出しに行ってくれ。」
少しの沈黙を破ったのはマスターの一言だった。
「でも今日は何にも買物は・・・」と言いかけたが
「行ってきなさい。あみ。」
そのいつもと違う強引な言い回しに納得のいかないあみは
レジを乱暴に閉め店の外へと出ていく。
しばらくすると女が切り出した。
「ごめんね。突然に・・・変わってないね。ここらへんも貴方も・・・」
「いいか、それを飲んだら帰るんだ。」
女の言葉を遮るかのようにマスターはおもむろに言葉を吐き出した。
もう一本の煙草に火をつけさほども吸わないうちにそれをもみ消すと
「ごめんね。」
とだけ呟いて女は出て行った。
マスターも煙草をつける・・・
一度だけ煙を吐き出すと・・・
「いつまでそこに突っ立ってるつもりだ。入りなさいあみ。」とだけ言って煙草を消した。
カランコロンカランコロン
「ごめんなさい。別に立ち聞きするつもりじゃ・・・」
「もういい。」
そういうと今度はマスターがあみへと笑顔を見せた。
当たり前だがさっきの女の笑顔とは全く異なりそれはあみを安心させた。
「買物は・・・」
「ああ、そうだな。すまん。俺が勘違いをしていたようだ。」
次回に・・・続きません・・・
マスターとなる野望が妄想に変わってきつつあります。
なので
キスイヤは皆様の妄想をお手伝い致します。。。
<< 牛込医院。。。
| TOP |
贈るほどでも無い。。。 >>